下伊那郡高森町大島山にある大嶋山瑠璃寺は、薬師瑠璃光如来三尊佛(国重要文化財)を本尊とする瑠璃寺と、その守護神として比叡山の麓にある日吉大社から分社された日吉神社の、神仏混淆(こんこう)の寺社です。
瑠璃寺は1,112年(平安時代・天永3年)、比叡山の観予僧都(かんよそうず)によって創建され、1,197年(建久3年)には源頼朝公の祈願所、その後も上杉謙信公戦勝祈願の寺、武田信玄公仏道修行の寺、徳川家御加護の寺としても知られています。
2012年には開創900年を迎えた由緒あるお寺で、中部四十九薬師の十六番礼所になっています。
境内には、源頼朝公が寄進したと伝わる枝垂れ桜(本堂前)、彼岸桜(会館横)、地主(じしゅ)桜、(鐘楼横)の三本の桜が代替わりして現在も春になると見事な桜を咲かせます。
中でも、枝垂れ桜は樹齢約400年とされ、長野県の天然記念物に指定されています。
大島山瑠璃寺の獅子舞は、瑠璃寺が創建したと同時期に発祥した長い歴史を持つ伝統芸能です。
観誉僧都が比叡山の坂本社から獅子を向かえ、縁日に舞いを行うようになったと伝えられています。
江戸時代中期に、現在のような舞楽系屋台獅子の形に固定したとされ、笛の響きや、綱を持ち獅子をあやす優雅な形態が見られます。
瑠璃寺の獅子舞は、伊那谷地方にだけ見られる幌の中に巨大な屋台を納め、舞い方とお囃子が入って練り歩く「舞楽系屋台獅子」の源流で、毎年4月に行われる奉納には多くの観客が訪れます。
また瑠璃寺では、普段見ることができないご本尊に代わり、薬師如来の化身、薬師猫神様が瑠璃の里会館にいます。
養蚕が盛んだった伊那谷では、大事な蚕をねずみから守るため、昔から猫を大切にしていました。
それがやがて『養蚕の神様』として神格化し、この地域には多く祀られていたこともあり、瑠璃寺では猫神様をお迎えしました。
現在瑠璃寺では、"瑠璃の里会館"で薬膳教室を行うなど、伝統あるものを守り、また新しい取組みも行っています。
今回は瑠璃寺の瀧本慈宗住職、佐藤清理事のご協力により紙面を作成しました。