山間地に小さな町や村がひしめく南信州エリアでは、土地に根ざした伝統的な祭事が一年を通して繰り広げられます。古くは800年前から脈々とつづくそれらの祭りの多くが、五穀豊穣を祈り、収穫の感謝を神々に捧げたもの。「農」と切っても切り離せない人々の暮らしぶりを、「祭り」を通して身近に体験することができます。
飯田市上村中郷ほか 12月〜
煮えたぎる湯釜を囲んで舞い踊り、湯で身を清めて豊穣を祈ります。800年前から続くこのまつりは、清和天皇の時代の祭事「湯立て」が原型と言われています。1979年、国の重要無形文化財に指定。
阿南町新野 1月
雪を稲穂の花に見立ています。大雪=豊年を願うまつりで、当日に雪が降ると豊年になるという五穀豊穣祈願で、新野に雪がないときは峠まで取りに行き、神前に供えます。
飯田市時又港 3月
毎年3月、地元の男衆が神馬、米俵、達磨、樽などの神輿を担いで時又を練り歩き、天竜川で身を清めます。まつりの由来は鎌倉時代。一度は途絶えたものの、1960年に地元の人たちにより復活しました。
4月
松川町の大島神社で毎年4月に行われる伝統の祭り。おかめ踊り、きつね踊り、地域の子どもたちによる花踊り等が奉納されます。
喬木村阿島 4月
平安の初期、毘沙門天を小川鞍馬地籍に安置したことから始まると伝えられるまつり。江戸時代には渡御行列が250人にも及び、盛大なおまつりになったといわれています。
飯田市上郷飯沼地区 4月(7年に一度)
野底山の天然林から樹齢130年のモミの木を伐り出し、地区内を曳行して飯沼諏訪神社の300余段ある石段を曳き上げる壮大な神事。飯田市上郷飯沼地区で7年ごとに催されています。
飯田市 4月(7年に一度)
野池神社の御柱祭は、二ノ宮(南信地方の総社)の式年造営として由緒正しき伝統文化。御柱を曳(ひ)き、社殿に建てて祭ります。二本を曳き建てて前回の二本を残し、四本柱にみたてるのが習わしです。
阿南町 7月
阿南町で最も古い地域である和合。約300年の伝統を持つ和合の念仏踊りは、毎年お盆の時期に、約130戸に及ぶ保存会の皆さんにより全過程が執り行なわれます。国重要無形民俗文化財に指定。
飯田市上村下栗 8月
飯田市上村下栗の掛け踊りは、約450年前から受け継がれてきたと言われており、干ばつに苦しんだ住人が素朴な舞いを神々に踊りかけ雨乞いし、豊穣を祈願したと伝わっています。国選択無形民俗文化財に指定。
泰阜村 8月
「榑木(くれき)」はサワラ、檜、などの上質材で、泰阜村周辺は耕作地が少ないため、江戸時代には米の代わりに榑木を年貢として納めていました。年貢の完納を喜び、神々に感謝するための踊りが、慶長年間から今に続いています。
飯田市今宮町・今宮郊戸八幡宮 9月
飯田市今宮町の今宮郊戸八幡宮で約300年つづく秋祭り。神輿20基が繰り出し、連合大三国(竹筒に黒色火薬を充填したもので、三河から飯田に伝来した大筒花火)と1500発の打ち上げ花火や大仕掛け花火の競演が見ものです。
9月
風神祭は本格的な台風シーズンを迎えるとされる二百十日に行われ、五穀豊穣と家内安全を祈ります。茅の輪くぐりは、カヤやススキで編んだ直径2mほどの輪をくぐる伝統行事で、輪を8の字を描くようにくぐり、厄を払い無病息災を祈ります。